大判例

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東京地方裁判所 昭和26年(ワ)4309号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕被告鈴木は受取人を「川越刑務所補導課」と記載した約束手形を振出して被告川島に交付し、被告川島はその裏書欄に「川越刑務所補導課川島勝雄」と記名し川島の個人印を捺して原告に交付した。原告は、右「川越刑務所補導課」の表示は被告川島が営業上常に使つていた名称で、被告川島の商号の如きものであるから、本件手形の受取人の記載は被告川島を表示したものであり、従つて裏書の連続あり、という。被告鈴木は、右表示が被告川島を表示したものなることを否認し、右記載は国の官庁の一課を表示したもので、正当に国の代表権ある官庁を表示したものでなく、また課員の何人を表示したか不明であるから、受取人の記載として不適法であり、本件手形は不完全手形である、と主張する。

〔判断〕判決は、まず証拠によつて、被告川島が前記名称を自己を表示するものとして慣用し、その知人取引先等においてもこれを知悉していたことを認めることができない、と認定してこの点の原告の主張を排斥したうえ、然らば前記受取人の記載の適否はその記載自体について判断するほかないとして、次のように説明する。

「よつて右記載につき案ずるに、国家行政組織法、法務省設置法によれば、法務大臣の管理の下に監獄法一条一項の規定による監獄として川越市に川越少年刑務所がおかれ、その内部組織は法務省令により定めるべく規定され、法務省令によれば、刑務所、少年刑務所及び拘置所に所長をおき、所長は法務大臣の指揮監督を受けて所務を掌理し所属の職員を指揮監督すること、少年刑務所に総務部及び補導部をおき、更に総務部には用度課等をおき用度課においては物資の購入及び保管営繕等の事務を扱い、補導部には補導課等をおき補導課においては作業の実施に関する事項等を扱うことが定められており、また会計法、予算決算及び会計令によれば、各省各庁において売買、貸借、請負その他の契約をなす場合においては各省各庁の長がこれに当るほか職員等に委任し得ること及びこの場合において各省各庁の長又はその委任を受けた官吏は契約書を作成し当該官吏が記名捺印すること等定めているので、所長がその所務を掌理する川越少年刑務所なる国の行政機関が存在し、所定の範囲においてはその名において国を代表して売買その他の取引をなし得ることをうかがい得べく、かように川越少年刑務所がありその名において売買その他の取引をしていることは、少くとも同刑務所の存在する川越市及びその附近においては一般に知られているものと言い得るので、前記受取人の記載は、右刑務所の内部組織なる一課を記載したものであるが、この記載により容易にその名において売買取引をなす右刑務所を判定し得るので、右刑務所を表示したものと解するを相当と考える。而して国の特定の行政機関を受取人として表示した場合、これを適法となし得るかは疑の余地なしとしないが、前記法令によれば行政機関が国を代表することを表示することなく売買その他の契約を締結することあるをうかがい得るし、また行政機関の表示により容易に国を代表していることを判定し得るので、その行政機関が権限を有するものと認められる限り、かような受取人の記載も私法人の一機関を記載した場合に適法となし得る場合があると同様に、これを適法と考えざるを得ない。尤も〃証券を以て才入納付に関する法律〃〃才入納付に使用する証券に関する勅令〃等において、行政機関が小切手為替手形を取得するにつき一定の制限を定めているので、約束手形についてもその取得を制限しているものと解する余地あるも、これは才入確保のためのものにして、売買その他の契約によつてこれを取得する場合をも制限し一般に手形行為を禁ずる趣旨とは解せられないので、これを以て前記受取人の記載を違法となすに由なきものと考える。然らば前記受取人の記載は適法にして、本件約束手形は適法に振出されたものといわざるを得ない。」

次に、裏書の連続の点について、次のとおり判示している。

「受取人の記載を前段説示のとおりに解する以上、裏書の連続ありとなすためには、受取人として表示されたる国の行政機関なる川越少年刑務所の行為につき権限を有する旨の表示をして裏書の記名捺印をすることを要するものというべきところ、前記の如き〃川越刑務所補導課川島勝雄〃なる記載は右権限の表示あるものとは認められないので、本件約束手形は裏書の連続を欠くものといわざるを得ない。」

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